典型的な小市民的老夫婦の家庭に、ある夜、女が尋ねてくる。女はかつて街角でマッチを売っては、火の灯っているあいだスカートの裾をあげて見せていた。そうするように教えたのはあなたですね、お父さん、と男に迫る。もちろん男には覚えがない。女は、弟や子供たちまで招き入れ、さらに深く夫婦の日常を侵犯しようとする。戦争にまつわる悲惨で後ろ暗い過去を「なかったこと」にして生きる「戦後の良識」に、激しい否を突きつけた作品。
『マッチ売りの少女』は日本を代表する劇作家の一人でカフカ、ベケットに繋がる日本の不条理演劇を確立した別役実氏の作品。1968年に岸田國士戯曲賞を受賞した。
登場人物は比較的少なく、シアター・ウィークエンドでも何度か取り上げてきた。
自分が演じたのは小市民の老夫婦の夫。
本番はもっと白髪にしてました。
ちょっとだけ身体をはりました。
弟を猛烈に叱りつけています。
過去の色々な出来事が過っています。
市の防災隊からやってきた変な男。
最後はアンデルセン童話の様な語り。
「寒い朝、少女が赤いホホをして、口元にはほほえみすら浮かべて、 死んでおりました。あたらしい年の朝が、小さななきがらの上にのぼり ました。そのなきがらは、ほとんどもえつくしたひとたばのマッチをも っておりました。人々は云いました。この子は、あたたまろうとしたん だね・・・。そうです、この子は、とてもさむかったのです。」
初老の夫婦は幸せそうな顔。
アンデルセン童話の世界ではマッチ売りの少女は天に召されてやっと幸せに。つまりハッピーエンド⁉︎
不条理な世界。
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